大要


10年にわたる調査

2006年3月、良心の囚人が中国全域の拘束施設や病院で、臓器移植の需要に応じて殺害されていることが明るみに出されました1

以来、国際的な調査者たちが、この疑惑の調査を続けています。二人のカナダ人、デービッド・キルガー氏(元アジア太平洋担当国務大臣)とデービッド・マタス氏(人権弁護士)の調査では、「疑惑は事実であるという遺憾な結論」が出されました2。同時に、ロンドンを拠点とする調査ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏も独自の調査に7年間を費やし、同様の結論に達しています3

遺憾なことに臓器収奪は終わっていません。それどころか、ここ10年にわたり急成長を続けているのです。

調査者たちは力を結集し、中国全域に及ぶ数百軒の移植病院を調査しました。この調査に基づき、キルガー氏、マタス氏、ガットマン氏は『中国臓器狩り/ザ・スローター(殺処分):最新報告書』4を2016年6月に発表。680ページに及び、2400近くの脚注がつけられたこの報告書は、移植濫用の本質と規模を明らかにしています。

私どもの調査は中国での移植産業の成長に関する病院のデータと政策指令を収集・分析しています。中国には効果的な臓器提供制度が存在しないにもかかわらず、わずか数年で世界最多の移植件数をこなす国となったことが判明しました。2006年に生体臓器移植が国際的に注目されるようになった後も、成長し続けています。中国が公式に認める臓器源に関する声明や方針の詳査、業界の歴史や政府の該当規制の要約を通して証拠を照合することで、国家、軍、民間機関がメディカル・ジェノサイド(医療上の大量殺人)を行うために動員されてきたことが浮き彫りになりました。

オンデマンドの臓器移植

調査者たちは必要に応じてオンデマンドで移植手術が行われる業界の存在を見出しました。

中国の肝移植登録は、肝移植の緊急手術で、臓器を数日ないしは数時間で調達した割合がかなり高いと報告しています。緊急を要しない場合は、腎肝移植の待ち時間は通常、数週間と記載されています5

ある病院の広告では「ドナーがレシピエントを求めています」と宣伝し「付着しない場合、成功するまで移植を続けます」と約束していました6

拒絶反応や予備の臓器として備えるために、医師が同じ患者のために複数の臓器を続けて調達する場合もあります7。中国では一人の患者が同じ臓器の移植手術を数回受けることは珍しいことではありません8。さらに、病院のホームページに、広域におよぶ移植用臓器の種類と価格表が公開されており、必要に応じて体のどの部分も代替可能であるという印象を与えています9

病院のプロフィール、メディアのインタビュー、その他の資料に、下記のような多くの個人・機関の業績が見受けられました。

  • 日夜を問わず移植手術をこなす外科チーム10
  • 複数の移植手術を同時に行う病院
  • 1日に10件、20件以上の腎移植11
  • 許容範囲を超えた病床の利用率
  • 移植病棟の拡張と新しい建物の建設12

 

偽りの公式移植件数

説明のつかない臓器源や病院・医師への報奨金のため、中国での臓器移植件数は各レベルで偽られてきました13。その結果、本当の移植件数は永遠に把握できません。

近年、中国の高官は、年間の移植総数を1万件と主張してきました14。しかし、個々の病院や医師に関するデータを分析した結果、わずか数軒の病院での移植件数を合わせるだけで公式件数を超えてしまうことが明らかになりました。実際、中国は世界のどの国よりも多く移植手術をしています15 16。目安として、米国の移植センター全てを合わせた肝移植件数は2000年以降、年間平均6000件です17。中国では、わずか2~3軒の病院での移植件数だけで、このような数値に達します。

政府が要求する移植センターの最低の設備基準を基に、169の衛生部認定移植病院が年間6万~10万件の移植手術を行ってきた可能性が浮き彫りになりました。2000年以来、合計100万件以上の移植手術の許容範囲に値します18

これだけが全体像ではありません。これらの病院の大多数が、最低要件をはるかに上回る手術を行っていることが調査で明らかになりました。さらに2007年に1000軒以上の病院が移植手術を継続するための認定を申請しています19 20。これらの病院も衛生部の要求する許容能力の最低基準を満たしていることを示唆するものであり、認定を受けなくても手術を継続しています21

臓器源

2005年以来、中国政府のスポークスマンは、大多数の臓器は死刑囚のものであると主張し、その後、自主的な臓器提供によるものであるとしてきました。しかし、この二つの臓器源を合わせても、中国での合計移植件数のわずかにしかあたりません。

国際的な諸機関では、2000年以降の中国での死刑者数は年間数千人と推定しており、2000年以来、減少してきたとしています22 23 24

中国の伝統的な風習では遺体は傷つけることなく、そのまま葬ります。このため、中国の臓器提供制度は2010年に初めて試験的に導入され、2013年まで国家全域にわたる制度は設立されませんでした25。しかし2015年に至っても、意味をなすほどの臓器提供はありません26

キルガー氏、マタス氏、ガットマン氏は2016年の独立報告書で以下の結論を出しています。

「究極的な結論は、移植のための臓器を入手するため、中国共産党は国家に無実の人々の大量殺害に従事させました。精神修養を基本とする法輪功学習者が主な犠牲者ですが、ウイグル人、チベット人、一部の家庭教会も含まれています27。」

国家犯罪

2000年以来、中国政権は、臓器移植手術を未来の新興産業として国家戦略の優先事項に位置づけ、移植技術の研究開発、産業化、移植スタッフの養成にかなりの投資をしてきました。そしてわずか数年で、中国は世界のどの国よりも多くの移植を手がけるようになりました28

この劇的な移植件数の増加は、中国共産党が「その名誉を毀損し、財を奪い、個体を消滅せよ!」と命じた法輪功撲滅運動と時期を同じにします。

軍と民間の両機関が、法輪功修煉者から臓器を大規模に収奪していることが調査で明らかになりました。中国共産党幹部は、超法規的な「610弁公室」を様々なレベルに設置し、統合された運営系統を確立して中央政法委員会によるオンデマンドでの臓器調達を可能にしました。解放軍総後勤部が、運営の中核ユニットの役割を果たし、軍部、武装警官、医療制度、臓器ブローカーに支えられています。

2016年の報告書では下記のように説明されています。

「中国共産党による法輪功の悪魔化・法輪功に対する残忍性、保健制度による臓器への貪欲さは、共生関係を生み出した。互いに補給しあうこの組み合わせは、前代未聞で想像を絶する人類の大惨事を導いている29。」

世界に輸出された身体

また、同じ犠牲者グループが移植手術のための臓器源となっただけでなく、プラスティネーションの標本にもなっているという証拠も明らかとなりました30

中国からのプラスティネーション化された人体の展示は、欧米で数百万人が目にしています。さらには中国からのプラスティネーション化された人体各部が、欧米の医療専門学校や大学に購入されてきました。

プラスティネーションは、無実の者を殺害する移植濫用からは示せない、人権侵害の現実を目前に広く公に示すものです。

臓器源と調達方法

中国臓器移植産業の発展と規模を把握するため、政府に認定された移植病院169軒を個々に分析しました。具体的には、移植の種類、移植医の資格、収益、レシピエントになる可能性のある患者の属性データ、病床数、外科医と支援スタッフ、移植許容数と実際の件数、研究プロジェクト、他の病院との関係、関連団体、資金、特許、報奨に関するデータを収集したのです。

中国政府の公式発表からは独立した真の移植件数を推定するため、中国衛生部およびその後身である衛生計画委員会が発行した政策と規則にあたりました。移植センターが国家認定の資格を維持するために必要な最低病床数が設定されているからです。さらに病院の一次情報やその他の出版物から病床利用率と入院期間を収集し、2000年以来移植センターに認定された169軒の病院全体にわたる移植許容量を最低値として割り出しました。

臓器源を追跡するため、中国政府が公式に認めた死刑囚、および最近導入された自主的な臓器提供プログラム(親戚、死体、心臓死後の臓器提供を含む)に関する政策を追っていきました。国家検閲および改ざんが一般化している公式データのため、正確な臓器件数を算出することはできません。このため、公に主張されている臓器源からの可能な臓器件数と、推定された移植件数の総計を質的に比較し、その格差(つまり説明のつかない臓器源)の存在を確立しました。

中国共産党と国家の政策を調べ合わせた結果、超法規的な良心の囚人の殺害、いやおうなしに「ドナー」から臓器を収奪するために国家、軍、民間の機関が動員されてきた構図が浮き彫りになりました。

データは全て、中国の医学学会誌、メディア報告、公的な声明、保存されたウェブサイト、政府の政策、国家戦略計画と資金割当、その他の公的な中国の情報源から得たものです。病院に電話をかけて、臓器移植プログラムの現状、その他の重要な情報の確認をとっています。

こちらに調査結果の要約をまとめました。移植病院別のデータベース(英語)も別に設定しております。


脚注

1
"Bloody Harvest F.C 31) A confession Authors: David Kilgour and David Matas"
Original: http://organharvestinvestigation.net/report0701/report20070131.htm#_Toc160145143
2
"Report into Allegations of Organ Harvesting of Falun Gong Practitioners in China. David Matas and David Kilgour. 6 July 2006."
Original: http://organharvestinvestigation.net/report0607/report060706-eng.pdf
3
"The Slaughter : Mass Killings, Organ Harvesting, and China’s Secret Solution to Its Dissident Problem Authors: Ethan Gutmann"
Original: http://ethan-gutmann.com/the-slaughter/
4
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/an-update/
5
"China Liver Transplant Registry’s 2006 Annual Report China Liver Transplant Registry"
Original: http://web.archive.org/web/20160216043257/
Archived: http://www.slideserve.com/lerato/2006
《中国肝移植注册2006年度报告》 来源:中国肝移植注册网
6
"YunNan Kidney Disease Hospital—a branch of the Yunnan Province Organ Transplant Center"
Original: http://www.minghui.org/mh/article_images/2008-9-5-kunming-kidney-02.jpg
云南肾脏病医院-云南省器官移植中心分部
7
"Bloody Harvest: Organ Harvesting of Falun Gong Practitioners in China (Revised Edition) Appendix 5. The Recipient Experience January 1, 2007 David Matas, David Kilgour"
Original: http://organharvestinvestigation.net/report0701/report20070131.htm#_Toc158023098
《血淋淋的器官摘取—关于指控中共摘取法轮功学员器官的调查报告修订版》
8
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update page 285~286 Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/wp-content/uploads/2016/06/Bloody_Harvest-The_Slaughter-June-23-V2.pdf
9
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update page 346~349 Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/wp-content/uploads/2016/06/Bloody_Harvest-The_Slaughter-June-23-V2.pdf
10
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update page 314~315 Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/wp-content/uploads/2016/06/Bloody_Harvest-The_Slaughter-June-23-V2.pdf
11
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update page 287~288 Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/wp-content/uploads/2016/06/Bloody_Harvest-The_Slaughter-June-23-V2.pdf
12
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update page 304~314 Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/wp-content/uploads/2016/06/Bloody_Harvest-The_Slaughter-June-23-V2.pdf
13
"Organ source transformed, however the number of transplant rises up instead of falling downing Source: Beijing Youth Daily October 15th, 2015"
Original: http://epaper.ynet.com/html/2015-10/19/content_159772.htm
Archived: https://archive.is/T3N0y
黄洁夫:器官来源转型 移植数不降反升 《北京青年报》 2015年10月15日
14
"WHO Officials Claim Organ Transplants in China Becoming Transparent China News Service, Aug 20, 2015 www.hb.chinanews.com/news/2015/0820/222847.html"
Original: https://archive.is/8OlTf
《中新网》 世卫官员称中国器官移植变得阳光透明 Aug 20, 2015 - 中新社
15
"Founder of Liver Surgery Wu Mengchao Shares Liver Disease Prevention and Secret to Long Life Source: Sina Health May 11, 2011 Reporter: Song Ruliang, etc."
Original: http://health.sina.com.cn/d/2011-05-11/145222445449.shtml
Archived: https://web.archive.org/web/20120327035615/http://health.sina.com.cn/d/2011-05-11/145222445449.shtml
《新浪健康》肝脏外科创始人吴孟超分享肝病防治与长寿秘诀2011年05月11日
16
"Beyond the Dark Veil of China’s Organ Trade Source:Phoenix Weekly Dated:September 24, 2013 The original page has been removed from:"
Original: http://www.51fenghuang.com/news/shehui/2412.html
Archived: https://archive.is/B36qx
中国人体器官买卖的黑幕 《凤凰周刊》2013-9-24
17
"Organ Procurement and Transplantation Network National Data, as of January 10, 2017"
Original: https://optn.transplant.hrsa.gov/data/view-data-reports/national-data/#
18
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update page 372~374 Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/wp-content/uploads/2016/06/Bloody_Harvest-The_Slaughter-June-23-V2.pdf
19
"Climbing the peak of transplantation, continue the wonderfulness of life"
Original: https://archive.is/DATK4
攀登移植之巅 延续生命精彩
20
"Climbing the peak of transplantation, continue the wonderfulness of life"
Original: http://www.dfmhp.com.cn/a/dongfengyilin/xingyedongtai/2010/1222/3020.html
Archived: http://www.transplantation.org.cn/zyienizhonghe/2015-05/7432.htm
https://archive.is/DATK4DATK4DATK4DATK4SzewF 攀登移植之巅 延续生命精彩 武大肝胆疾病研究院:器官移植与时间赛跑
21
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update page 372~374 Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/wp-content/uploads/2016/06/Bloody_Harvest-The_Slaughter-June-23-V2.pdf
22
"People’s Republic of China Executed “according to law”? – The death penalty in China, Amnesty International, AI Index: ASA 17/003/2004"
23
"Roger Hood – ‘Abolition of the Death Penalty China in World Perspective’ (2009) 1CityUHKLRev1"
24
"The Next Frontier National Development, Political Change, and the Death Penalty in Asia Studies in Crime and Public Policy, David T Johnson, Franklin E Zimring"
25
"Huang Jiefu: I only watched once the organ extraction procedure and felt changed needed Phoenix TV 2015-01-11"
Original: http://news.ifeng.com/a/20150111/42906812_0.shtml
Archived: https://archive.is/YxJwf
黄洁夫:我只看过一次摘取器官 觉得需要改变 凤凰卫视 2015年01月11日
26
"“Huang Jiefu: ‘Can death-row prisoners donate organ?’ is a pseudo-proposition” , Beijing Youth Daily. November 23, 2015"
Original: http://epaper.ynet.com/html/2015-11/23/content_167300.htm?div=-1
Archived: https://archive.is/hSlEd
黄洁夫:死囚可否捐器官是伪命题 《北京青年报》, 2015年11月23日
27
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update page 352~363 Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/wp-content/uploads/2016/06/Bloody_Harvest-The_Slaughter-June-23-V2.pdf
28
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update page 352~363 Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/wp-content/uploads/2016/06/Bloody_Harvest-The_Slaughter-June-23-V2.pdf
29
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update page 424~425 Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/wp-content/uploads/2016/06/Bloody_Harvest-The_Slaughter-June-23-V2.pdf
30
"Bloody Harvest/The Slaughter: An Update page 394~399 Authors: David Kilgour, Ethan Gutmann, and David Matas, June 22, 2016"
Original: http://endorganpillaging.org/wp-content/uploads/2016/06/Bloody_Harvest-The_Slaughter-June-23-V2.pdf